AMP(Accelerated Mobile Pages)

用語解説

Accelerated Mobile Pages(AMP)は、Googleが主導するオープンソースプロジェクトであり、モバイルWebページの高速化とユーザビリティ向上を目的としています。 AMPの主要な概念、アーキテクチャ、利点と欠点、具体的な実装方法、そしてSEOとの関連性について詳細に解説します。

1. AMPの概要と目的

AMPは、モバイルデバイスでのWebページの表示速度を劇的に改善するために開発されました。 モバイル環境における低速なインターネット接続やデバイス性能の制約、リソース集約的な広告など、様々な要因がページの読み込み速度を遅らせ、ユーザーエクスペリエンスを損なう可能性があります。 AMPは、これらの課題に対処するために、特定の制限と最適化された技術を用いることで、ユーザーに即座に近いページ読み込み速度を提供することを目指しています。

主な目的:

ページの高速表示: ユーザーがページを瞬時に読み込めるようにする。

モバイル体験の向上: ユーザーフレンドリーでスムーズな操作性を提供する。

Webサイトのリーチ拡大: 高速な読み込み速度により、離脱率を下げ、エンゲージメントを高める。

オープンソース技術の推進: コミュニティによる開発と改善を促す。

2. AMPのアーキテクチャと主要コンポーネント

AMPは、主に以下の3つの主要コンポーネントで構成されています。

AMP HTML: 制限されたHTMLのサブセットであり、特定のタグと属性の使用が許可されています。JavaScriptの実行は制限されており、非同期的な読み込みが推奨されています。

AMP JS: AMP専用に設計されたJavaScriptライブラリで、リソースの読み込みを管理し、ページの高速表示を可能にします。サードパーティのJavaScriptは許可されていません。

AMP Cache: Google AMP Cacheは、AMP対応ページをキャッシュし、コンテンツを高速に配信するために使用されます。他のAMPキャッシュプロバイダーも存在します。

各コンポーネントの詳細:

AMP HTML:

<!doctype html><html amp>: AMP HTMLであることを宣言します。

<link rel=”canonical” href=”URL”>: AMPページが対応する通常のWebページのURLを指定します(重要)。

<meta name=”viewport” content=”width=device-width,minimum-scale=1,initial-scale=1″>: 適切なviewport設定を行います。

<style amp-custom>: インラインでカスタムスタイルを記述します (CSSのサイズ制限あり)。

<script async src=”https://cdn.ampproject.org/v0.js”></script>: AMP JSライブラリを読み込みます。

カスタム要素: amp-img, amp-video, amp-adなど、特定の機能を実行するためのAMP固有の要素を使用します。これらの要素は、リソースの遅延読み込みやサイズ調整などの最適化を行います。

禁止事項: windowオブジェクトへの直接アクセス、サードパーティJavaScriptの実行、同期的なJavaScriptの実行などが禁止されています。

AMP JS:

リソースの遅延読み込み、プリフェッチ、優先順位付けなど、ページのパフォーマンスを最適化するための機能を提供します。

カスタム要素の制御や、AMP Cacheからのコンテンツ配信を管理します。

サードパーティのJavaScriptをサンドボックス化されたiframe内で実行するための仕組みを提供します(amp-iframe)。

AMP Cache:

AMP対応ページをキャッシュし、GoogleのグローバルCDNを通じてコンテンツを配信します。

コンテンツの署名検証、パフォーマンス最適化、セキュリティ対策など、様々な機能を提供します。

キャッシュされたコンテンツは、ユーザーがGoogle検索結果からAMPページにアクセスした際に、ほぼ瞬時に表示されます。

AMP Cacheは、Webサイト運営者が独自に構築することも可能です。

3. AMPの利点と欠点

AMPは、高速なページ表示とモバイルエクスペリエンスの向上という点で大きな利点がありますが、同時にいくつかの欠点も存在します。

利点:

高速なページ表示: 最も重要な利点であり、ユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させます。

SEO効果: Google検索において、AMP対応ページは優先的に表示される傾向があり、ランキング向上に貢献する可能性があります。

低い離脱率: 高速なページ表示により、ユーザーがページを離れる可能性を減らすことができます。

高いエンゲージメント: ユーザーがページに長く滞在し、より多くのコンテンツを消費する傾向があります。

Googleによるキャッシュ: AMP Cacheによる高速なコンテンツ配信が可能です。

モバイルフレンドリー: モバイルデバイスでの表示に最適化されています。

オープンソース: コミュニティによる開発と改善が継続的に行われています。

広告パフォーマンスの向上: 高速なページ表示により、広告の表示速度が向上し、クリック率やコンバージョン率の向上が期待できます。

欠点:

技術的な制約: AMP HTMLの制限により、Webサイトのデザインや機能に制限が生じる可能性があります。

実装コスト: AMP対応ページの作成には、追加の技術的な労力が必要となる場合があります。

広告の制限: AMPでは、特定の広告フォーマットや広告ネットワークの使用が制限される場合があります。

アナリティクスの複雑さ: AMPページと通常のWebページで、アナリティクスの設定が異なる場合があります。

サードパーティコンポーネントの制限: サードパーティのJavaScriptやプラグインの使用が制限されるため、Webサイトの機能が制限される可能性があります。

メンテナンス: AMPページと通常のWebページの両方を管理する必要があるため、メンテナンスの負担が増える可能性があります。

Googleへの依存: AMP Cacheの使用は、Googleへの依存度を高める可能性があります。

デザインの制限: AMPの制約により、Webサイトのデザインの自由度が制限される可能性があります。

4. AMPの実装方法

AMP対応ページを実装するには、以下の手順に従います。

AMP HTMLの作成: AMP HTMLの仕様に従って、ページのHTMLを記述します。

<!doctype html><html amp>を宣言する。

<link rel=”canonical” href=”URL”>で正規URLを指定する。

必要なメタデータを追加する。

<style amp-custom>でインラインCSSを記述する。

AMP JSライブラリを読み込む。

カスタム要素(amp-img, amp-videoなど)を使用する。

CSSの最適化: CSSのサイズを最小限に抑え、インラインで記述します。

JavaScriptの制限: サードパーティのJavaScriptを使用しないか、amp-iframeを使用してサンドボックス化された環境で実行します。

画像の最適化: 画像を圧縮し、適切なサイズに調整します。amp-imgを使用して遅延読み込みを有効にします。

動画の最適化: 動画を圧縮し、複数の形式で提供します。amp-videoを使用して遅延読み込みを有効にします。

AMP Validatorによる検証: AMP Validatorを使用して、AMP HTMLの構文エラーをチェックします。 AMP Validatorは、ブラウザの拡張機能、オンラインツール、またはコマンドラインツールとして利用できます。

Google Search Consoleへの登録: AMPページをGoogle Search Consoleに登録し、インデックス登録をリクエストします。

テストと最適化: AMPページを様々なデバイスでテストし、パフォーマンスを最適化します。

例:シンプルなAMP HTMLページ

<!doctype html>
<html amp lang=”ja”>
<head>
<meta charset=”utf-8″>
<script async src=”https://cdn.ampproject.org/v0.js”></script>
<title>シンプルなAMPページ</title>
<link rel=”canonical” href=”http://example.com/non-amp-version.html”>
<meta name=”viewport” content=”width=device-width,minimum-scale=1,initial-scale=1″>
<style amp-boilerplate>body{-webkit-animation:-amp-start 8s steps(1,end) 0s 1 normal both;-moz-animation:-amp-start 8s steps(1,end) 0s 1 normal both;-ms-animation:-amp-start 8s steps(1,end) 0s 1 normal both;animation:-amp-start 8s steps(1,end) 0s 1 normal both}@-webkit-keyframes -amp-start{from{visibility:hidden}to{visibility:visible}}@-moz-keyframes -amp-start{from{visibility:hidden}to{visibility:visible}}@-ms-keyframes -amp-start{from{visibility:hidden}to{visibility:visible}}@-o-keyframes -amp-start{from{visibility:hidden}to{visibility:visible}}@keyframes -amp-start{from{visibility:hidden}to{visibility:visible}}</style><noscript><style amp-boilerplate>body{-webkit-animation:none;-moz-animation:none;-ms-animation:none;animation:none}</style></noscript>
<style amp-custom>
body {
font-family: sans-serif;
}
h1 {
color: blue;
}
</style>
</head>
<body>
<h1>こんにちは、AMP!</h1>
<amp-img src=”images/amp-logo.png” alt=”AMPロゴ” width=”300″ height=”100″ layout=”responsive”></amp-img>
<p>これは、シンプルなAMPページの例です。</p>
</body>
</html>
Use code with caution.
Html
5. AMPとSEO

AMPは、SEOに大きな影響を与える可能性があります。 Googleは、高速なページ表示をランキングシグナルとして使用しており、AMP対応ページは検索結果で優遇される傾向があります。

ランキングの向上: 高速なページ表示は、ランキングの向上に貢献します。

カルーセル表示: AMP対応のニュース記事は、Google検索のトップニュースカルーセルに表示される可能性があります。

モバイルファーストインデックス: Googleは、モバイル版のWebサイトをインデックスの主要なソースとして使用しており、AMPはモバイルフレンドリーなWebサイトを作成するのに役立ちます。

離脱率の低下: 高速なページ表示により、離脱率を下げ、ユーザーエンゲージメントを高めることができます。

AMP SEOのベストプラクティス:

rel=”canonical”属性: AMPページに対応する通常のWebページのURLを<link rel=”canonical” href=”URL”>で指定します。

構造化データ: AMPページに適切な構造化データ(Schema.org)を追加し、検索エンジンにコンテンツの内容を理解させます。

キーワード: AMPページのコンテンツに、関連性の高いキーワードを含めます。

モバイルフレンドリー: AMPページがモバイルデバイスで適切に表示されるようにします。

高速なページ表示: AMPページが高速に読み込まれるように、リソースを最適化します。

6. AMPの今後の展望

AMPは、Googleによって継続的に開発されており、新しい機能や改善が定期的にリリースされています。 今後、AMPは、より柔軟でカスタマイズ可能なプラットフォームとなり、Webサイト運営者がより自由にWebサイトを構築できるようになることが期待されています。

AMP Stories: ビジュアルコンテンツを重視した、ストーリー形式のコンテンツを作成するための新しいAMPコンポーネント。

AMP for Email: 動的なコンテンツやインタラクティブな要素を含む、高度なメールを作成するためのAMP技術。

より柔軟なデザイン: AMP HTMLの制限が緩和され、より自由なデザインが可能になることが期待されます。

より多くのプラットフォームへの対応: AMPが、Google検索以外のプラットフォームでも広く利用されるようになることが期待されます。

7. まとめ

AMPは、モバイルWebページの高速化とユーザビリティ向上に貢献する強力なツールです。 高速なページ表示、SEO効果、高いエンゲージメントなどの利点がありますが、同時に技術的な制約や実装コストなどの欠点も存在します。 AMPを導入する際には、これらの利点と欠点を十分に考慮し、自社のWebサイトのニーズに最適なソリューションを選択することが重要です。